心理療法・心理カウンセリングの特徴

特徴1認知行動療法に基づいた心理療法

 

認知療法(認知行動療法)とは,

「ある状況下における感情や行動は,その状況に対する意味付け・解釈といった本人の認知によって規定される」

という認知モデルに基づいて問題を理解し,思考のパターンを変容させることで,感情や気分を回復させる心理療法です。言い換えると「きっかけとなる出来事→認知→感情」という情報処理プロセスです。夜中に物音がしたときに,「泥棒が入った」と考えれば不安や恐怖が生じますが,「家族が帰ってきた」と考えれば安心します。そのため,うつ気分や不安という感情的問題を解決するためには,感情を生み出している思考の内容を変容させれば良いことになります。こうした,うつ気分や不安が思考の内容によって生じることを認知的特異仮説と言います。

 

認知療法は1970年代から主にうつ病に対する治療効果が確かめられ,1980年代以降では不安障害やパニック障害,人格障害,統合失調症などにまで幅広く適用されるようになりました。また,当初は主に思考の問題に焦点が当てられていたため認知療法と呼ばれていましたが,1990年代に入って行動的技法が取り入れられてからは,認知行動療法と呼ばれています。

 

認知行動療法の特徴の一つは,薬物療法と比較検討を通してその有効性を科学的に確立したことにあります。その科学的有効性の高さのゆえに,認知行動療法は心理療法における世界標準となっています。最近では,認知や行動の内容だけではなく,認知や行動のプロセスにも目が向けられて,マインドフルネスやACT,メタ認知療法,スキーマ療法などの新たな技法が開発されています。

 

また,感情的問題を異常なものとせず,それは日常的に考えている普通の内容によってもたらされると見なします。無意識を仮定した特殊な理論でセラピストが解釈するのではなく,常識的な視点(コモンセンス)から問題を理解し,それをセラピストとご相談者と共有することが原則であるため,自らの問題を普通のこととして理解していく点は認知行動療法の特徴です。

 

そして,間違いを正すのではなく,固定化したパターンから脱却して,認知や行動を柔軟で適応的な状態にすることが大きな目標です。ときに,否定的な思考であっても,それは現実的であることがあります。そのときは,問題となる状況そのものを解決するための対処技法(ストレスコーピング)の向上に取り組みます。

 

このため,認知行動療法を練習することは,自らをコントロールするスキルを身につけることになります。これは,自らが自分の治療者となることを意味します。そのため,セルフヘルプの心理療法と呼ばれます。

 

また,認知行動療法ではご相談される方と協同関係をもって問題に取り組みます。支持的カウンセリングの受け手の役割に徹するのではなく,無意識を解釈する者の役割を担うわけでもありません。役割と責任をご相談者と分担し,チームとして同じ目線で問題の解決にあたります。そのため,時にご相談者が問題解決の主導権を担うこともあります。

 

そして,当オフィスでは認知行動療法の中でも,ご相談される方の心理的メカニズムを簡潔にまとめることに注力しています。つまり,心の地図を描き出すことです。この地図があれば,自分の判断で問題点により効果的にアプローチすることができるなどの利点があります。自分の心の地図を手にして,自分の選択でよりよい人生を歩んでいけるようなお手伝いをさせて頂いています。

 

特徴2トラウマを含めたストレス反応をEMDRによりケア

うつや不安といった感情的問題や電車に乗れない,アルコールを飲んでしまうといった行動的問題は,認知や行動の柔軟性を高めるアプローチだけでは,回復が長引いてしまうことがあります。これまで心理臨床の実践において,多くの方の心の地図を描き出すと,そうした問題の背景にはトラウマを含めたストレス反応が多くありました。

 

トラウマの反応とは,脅威に曝されたときに動物が自然にとる防御反応です。これは主に身体から生じる反応です。頭では全然平気だと思っているのに,体が震えてしまう,動けなくなってしまう,頭が真っ白になってしまうなどの反応があります。こうした身体反応による2次的な結果としてうつや不安が生じているときがあります。その場合は,このトラウマを解消する必要があります。

 

1回のストレスの大小ではなく曝されたストレスの総量が大きくなったときに,トラウマが形成されます。こうしたストレスに曝される度に,心身は危険を体験します。このため,トラウマを言い換えると,心身が過剰警戒の状態にあると言えます。

 

例えば,フラッシュバックという症状は平穏な状況でも警戒を怠るなという体からの指令が,ストレス時の記憶を刺激し,個体内で表出される警告サインです。理由のわからない緊張や震え,不安,心身の重たさなどのストレス反応は,身体からの警告サインという意味があるため,過剰な警戒状態を解除するための手当が必要となります。

 

お薬はこのストレス反応の緩和に必要ですが,過剰な警戒状態そのものを解消するためには,心理的な側面からのケアが必要です。当オフィスでは,そうした外傷的なストレス反応を,最先端で最も負担の少ないトラウマの心理療法であるEMDRを用いて,トラウマ解消のお手伝いをさせて頂きます。

EMDRとは、WHOからPTSDへの治療法として最も有効であると支持された方法です。眼球運動や音、タッピングなどを用いて身体の左右に対称な刺激を与える、両側性刺激を用いて、脳内の処理を活性化させることでトラウマを速やかに処理する技法です。従来の心理療法や薬物療法よりも、心身の負担が少なく回数も比較的短期で済むというメリットがあります。

 

特徴3マイナスからゼロに,ゼロからプラス

苦難に直面してはじめて,多くの人が自身の内面を深くみつめ,本当に生きる上で大切なものは何かを再び見いだす。逆境がその人の生まれもった資質を目覚めさせ,充実や喜びに満ちた新たな人生へと導く。

 

そのように感じることが心理臨床のなかで幾多もありました。医療現場などの心理カウンセリングでは,うつ気分や不安などの症状を解消されれば終了となることが少なくありません。しかし,症状の解消後もさらに話し合う機会を持てたときに,苦難を乗り越える体験を通して新たな生き方を見いだす方が多く生まれてきました。

 

人は悲しみを知ることで喜びの体験を深めることができます。いままで当たり前だったことがかけがえのないものであったことに気づく体験は,万人に共通したことでしょう。医療機関の心理カウンセリングでは,病気を治すという医療の大きな目的があるため,問題となる症状が解消したら終わりとなりやすいです。そのため,当オフィスは問題の解決だけではなく安心や喜び,愛情などの幸福感(well-being)の向上も目標とします。

 

辛く苦しい日々を過ごされてきた方が,心理療法や心理カウンセリングを通して,良い体験を重ねて人生を送っていけるようになるお手伝いをさせて頂きます。

 

 

心理療法・心理カウンセリングの種類

認知行動療法

 最近では最も科学的なエビデンスを持った心理療法です。定型的な手続きに乗っ取りながら、うつ病や不安障害,パニック障害,強迫性障害,人格障害,幻覚妄想,トラウマなどの問題を解決することができます。

 また,マインドフルネスやアクセプタンスコミットメントセラピー(ACT),メタ認知療法,スキーマ療法といった最新の技法を取り入れています。

 ご相談される方の問題の性質に応じて認知行動療法を実施させて頂きます。

 

EMDR

 EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法です。さらに、他の精神科疾患、精神衛生の問題、身体的症状の治療にも、学術雑誌などに成功例がしっかり記述されています。従来の心理療法が5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを、EMDRでは非常に短時間に進めることができます。起こったできごとのすべてをこと細かく語ることは必要とはされないため、大変ストレスの少ない方法です。

 

ストレスマネジメント

 認知行動療法の理論を生かしたストレスマネジメントのスキルを用いて、職場や家庭などにおけるストレスやストレッサーへの対応法や、ストレス状況下における心身のコントロールを保つ方法を話し合います。また、すべての問題に対して臨床心理学などの幅広い専門の知見を生かして対応いたします。

 また、特に休職や復職に関わる問題や、職場ストレスへの対処に関しては、これまでも多くの方の支援に関わって来た実績があります

 さらに、ご相談者の方の悩みに沿ってお話を傾聴させて頂くことで、面談中に心が軽くなるようなお手伝いをさせて頂きます。

 

問題解決療法

 ご自身の内面ではなく,家族や職場のストレッサーなどご相談者を取り囲む環境に問題があるときは,その問題を解決するための話し合いをします。
 問題を整理してポイントを明確にし,どんな行動をすればどのような結果がもたらされるのかを確認する手続きを通して,適切な解決策の創出と実行をいたします。
 また,問題を話し合う中では,ご相談者様の気持ちを傾聴させて頂きます。問題解決と共にその場で心が軽くなるようなお手伝いもさせて頂きます。

自我状態療法

 自我状態とは自己の一部あるいは一側面です。人格エネルギーを持ち、それ自身の歴史や信念や欲求、感覚体験、目的などを持っています。この自我状態は、内なる声として現れたり、イメージとして現れることがあります。また、身体感覚、感情、シンボル、色などとして現れることがあります。自我状態は解離性同一性障害における「交代人格」のように人物像として出てくるとは限りません。

 これらの自我状態の間で、何らかの葛藤や機能不全があるときに、様々な症状として表面化することがあります。ときに、心理的な回復を阻害する要因となることがあります。そのときに、イメージを通して自我状態にアクセスし、それらと話し合うことで、葛藤を解消し、平衡状態を取り戻します。

 

スキーマ療法

 認知行動療法において自動思考を生成させる信念体系のことをスキーマと呼びます。このスキーマには、自分は愛されていない、必ず失敗するなどの18の非機能的な信念があります。このスキーマによって、気分障害のみならず人格障害などの問題が生じます。このスキーマを修正するために開発されたのが、スキーマ療法です。

 例えば、欠陥スキーマによって、人の目を恐れるチャイルドモードに陥った時に、新たにヘルシーアダルトモードと呼ばれる、情緒的に温かい大人のモードを練習することで、不安から自分を守り、自信を育て、傷ついたチャイルドモードを癒していきます。

 こうした治療的再養育に取り組むことで、様々な問題の根源にある愛着の傷を修復します。